Exhibition展示案内
展示のスケジュール
A Song to Kindle the Light
2025.06.04Wed - 06.12Thu
塩川 雄也
光を求めた新しい年。
聖夜の温もりに包まれた、東欧の静かな村々を旅した。
湖のほとりの村で、人々が歌っていた。
“コリンダ”という、古くから伝わる民謡。
それは、新しい年の幸せを願い、家々を巡って届けられる「歌の贈りもの」だった。
どこか懐かしく、優しさに包まれたその音色は、
国境や信仰を越えて、心にすっと入り込んでくるようだった。
手でつくることは、歌うことに似ているのかもしれない。
それは単に“もの”を生むのではなく、
祈るように、誰かを思い浮かべながら、
静かな時間の中で紡がれていく。
目に見えない記憶や想いの断片を、
そっと継ぎ合わせていくような営みだ。
伝統を受け継いでいくということは、
過去を守ることではなく、
今を生きる暮らしの中で、もう一度灯していくこと。
そのことを、この旅が教えてくれた。
あの歌に、この旅に、
ひとつの灯りのようなものを感じている。
これからも旅を続けながら、その光を追い求めていくのだろう。
山 の む こ う
2025.06.18Wed - 06.26Thu
佐藤 啓太
太古の人々が見た景色を、現代の我々も見ることは出来るのか。
時間を越える景色を求めた写真家たちは、海の水平線という原始的な直線や、
人の営みとは関係なく循環する森、そのような景色を撮影するに至った。
古代から神仏の感得を求めて山を歩いた人々は山中に何を見たのだろう?
山は恵みの地であると同時に神霊の住処であり魑魅魍魎が彷徨う他界であった。
中世に成立した修験道では山を曼荼羅そのものとし、行法の成就には大自然と自己が二つで一つになる感覚を得ることが重要とされた。
山のものでありながら山のむこうを幻視させるもの。
ありふれた、何気ない景色の中に大きな力や崇高さを伴う顕れを見出すこと。
登山を続ける中で私は、遥か昔の人々が神仏を感得するに至った景色とはそういうものではないかと考えるようになった。
山のむこう、景色に潜む崇高さとの邂逅を繰り返すことが、大自然と自己が二つで一つとなるための道であり、山中において神仏の感得を求めた人々と同じものを見る事にも繋がってゆくのではないか?
そう考えて私は山を登り続けている。