Exhibition展示案内
展示のスケジュール
新 ば し 芸 者 の お 気 に 入 り(東をどり 第100回記念)
2025.05.14Wed - 05.24Sat
花柳界とは芸者文化の残る地域を指し新橋花柳界は江戸時代を起源とし現在まで続く京都祇園他と並ぶ品格と格式のある花柳界です。
芸者衆は三味線、舞踊、唄、茶道等の芸に常に精進を欠かしません。また舞踊であれば尾上、西川、花柳三流の家元の直弟子であるなど芸についてはトップクラスの実力の持ち主です。
その芸の発表の場としての東をどりは大正14年に落成した新橋演舞場のこけら落とし公演として始まり今回記念すべき第100回の公演が5月21日から27日まで新橋演舞場で開催されます。
新橋花柳界は客と店・芸者との信頼関係を大切にするため、いわゆる一見さんお断りの世界ですが東をどりを通じて新橋の文化に広く触れることが出来ます。この度東をどり第100回を記念し写真展「新橋芸者のお気に入り」を開催いたします。 新橋芸者が花柳界での仕事に、お稽古に使用する小道具の中から特にお気に入りの一つを芸者衆全員からご提供頂き一つ一つ大切に撮影いたしました。
普段はならなか触れることの出来ない新橋花柳界の文化、習慣を「モノ」という側面から感じて頂ければ幸いです。
現在新橋には38名の芸者がおりますが38名分を一度に展示することは難しいため前期後期に分けて展示いたしますのでそれぞれの展示をご覧いただければ幸いです。また東をどり初期の写真も数点展示し、その歴史を感じて頂く展示となっています。
A Song to Kindle the Light
2025.06.04Wed - 06.12Thu
塩川 雄也
光を求めた新しい年。
聖夜の温もりに包まれた、東欧の静かな村々を旅した。
湖のほとりの村で、人々が歌っていた。
“コリンダ”という、古くから伝わる民謡。
それは、新しい年の幸せを願い、家々を巡って届けられる「歌の贈りもの」だった。
どこか懐かしく、優しさに包まれたその音色は、
国境や信仰を越えて、心にすっと入り込んでくるようだった。
手でつくることは、歌うことに似ているのかもしれない。
それは単に“もの”を生むのではなく、
祈るように、誰かを思い浮かべながら、
静かな時間の中で紡がれていく。
目に見えない記憶や想いの断片を、
そっと継ぎ合わせていくような営みだ。
伝統を受け継いでいくということは、
過去を守ることではなく、
今を生きる暮らしの中で、もう一度灯していくこと。
そのことを、この旅が教えてくれた。
あの歌に、この旅に、
ひとつの灯りのようなものを感じている。
これからも旅を続けながら、その光を追い求めていくのだろう。
山 の む こ う
2025.06.18Wed - 06.26Thu
佐藤 啓太
太古の人々が見た景色を、現代の我々も見ることは出来るのか。
時間を越える景色を求めた写真家たちは、海の水平線という原始的な直線や、
人の営みとは関係なく循環する森、そのような景色を撮影するに至った。
古代から神仏の感得を求めて山を歩いた人々は山中に何を見たのだろう?
山は恵みの地であると同時に神霊の住処であり魑魅魍魎が彷徨う他界であった。
中世に成立した修験道では山を曼荼羅そのものとし、行法の成就には大自然と自己が二つで一つになる感覚を得ることが重要とされた。
山のものでありながら山のむこうを幻視させるもの。
ありふれた、何気ない景色の中に大きな力や崇高さを伴う顕れを見出すこと。
登山を続ける中で私は、遥か昔の人々が神仏を感得するに至った景色とはそういうものではないかと考えるようになった。
山のむこう、景色に潜む崇高さとの邂逅を繰り返すことが、大自然と自己が二つで一つとなるための道であり、山中において神仏の感得を求めた人々と同じものを見る事にも繋がってゆくのではないか?
そう考えて私は山を登り続けている。