Exhibition展示案内

過去の展示

「祈りと願い 未来へ。8月6日の広島平和公園」

2025.07.09Wed - 07.17Thu

近重 幸哉

「毎年、今年が最後になるかも知れないと思って来ています」という20年前に聞いた当時88歳だった 被爆者のおばあさんの言葉が心に残っています。広島の8月6日の平和記念公園は、日差しが照りつけ風 もほとんど吹きません。5万人を割り、平均年齢が86歳を超えた原爆を体験した方たちには、辛いだけで なく過酷なお参りになるのです。
 今年、広島は被爆から80回目の原爆の日を迎えます。私が8月6日の平和記念公園を毎年撮影し始めたの が2000年でしたので、昨年で25年になりました。この間に、まだ多かった被爆体験者や被爆者のご遺族 の方たちの多くが、8月6日の平和記念公園へ来れなくなっています。来るのは私たち被爆2世、被爆者の 孫以降の世代に移っているのです。そのことはとても大切だと、写真を撮影してきて思いました。広島 には、原爆で亡くなった方たちに安らかに眠ってほしいという祈りと、2度と戦争を起こしてはいけな いという平和への願いがあります。その「祈りと願い」を未来に伝えていかなければならないのです。
 私が10代の頃、原爆の日にテレビを見ていた母が「ほっといて欲しいんよねぇ」と、小さな声で呟い たのを耳にして驚いたことがありました。母は毎年、原爆の日に平和記念公園に手を合わせに行ってい ました。中学1年だった弟が原爆で行方不明になったままだけに、言葉にしたくない辛い思いもあった と思います。先日お話を伺った母の弟の1学年先輩の93歳の被爆者の方も3年前まで「何も話したくな い」と思っていたそうです。その方はロシアのウクライナ侵攻が起こって以降に証言者となり被爆体験 を人々に伝えています。
 同様に50年以上も何も話したがらなかった母は、70歳を迎えた頃から自身の余命を感じたのか、原爆に ついて後世に伝えなければならないという気持ちになっていったと思います。それで、弟の旧制一中の制 服を原爆資料館に寄贈したりもしていました。21世紀も四半世紀が経った今日でも、この地球上では愚 かな殺戮が繰り返されています。焼け野原の広島を弟を探して歩き回った母が何度も言っていた「母さ んは地獄を見たよ。戦争は絶対にいけんよ」という戦争を体験した人たちの思いを、次世代に引き継い でいくことは、ほんとうに大切だと思うのです。

山 の む こ う

2025.06.18Wed - 06.26Thu

佐藤 啓太

太古の人々が見た景色を、現代の我々も見ることは出来るのか。
時間を越える景色を求めた写真家たちは、海の水平線という原始的な直線や、
人の営みとは関係なく循環する森、そのような景色を撮影するに至った。

古代から神仏の感得を求めて山を歩いた人々は山中に何を見たのだろう?
山は恵みの地であると同時に神霊の住処であり魑魅魍魎が彷徨う他界であった。
中世に成立した修験道では山を曼荼羅そのものとし、行法の成就には大自然と自己が二つで一つになる感覚を得ることが重要とされた。

山のものでありながら山のむこうを幻視させるもの。
ありふれた、何気ない景色の中に大きな力や崇高さを伴う顕れを見出すこと。
登山を続ける中で私は、遥か昔の人々が神仏を感得するに至った景色とはそういうものではないかと考えるようになった。

山のむこう、景色に潜む崇高さとの邂逅を繰り返すことが、大自然と自己が二つで一つとなるための道であり、山中において神仏の感得を求めた人々と同じものを見る事にも繋がってゆくのではないか?

そう考えて私は山を登り続けている。

A Song to Kindle the Light

2025.06.04Wed - 06.12Thu

塩川 雄也

光を求めた新しい年。
聖夜の温もりに包まれた、東欧の静かな村々を旅した。

湖のほとりの村で、人々が歌っていた。
“コリンダ”という、古くから伝わる民謡。
それは、新しい年の幸せを願い、家々を巡って届けられる「歌の贈りもの」だった。
どこか懐かしく、優しさに包まれたその音色は、
国境や信仰を越えて、心にすっと入り込んでくるようだった。

手でつくることは、歌うことに似ているのかもしれない。
それは単に“もの”を生むのではなく、
祈るように、誰かを思い浮かべながら、
静かな時間の中で紡がれていく。
目に見えない記憶や想いの断片を、
そっと継ぎ合わせていくような営みだ。

伝統を受け継いでいくということは、
過去を守ることではなく、
今を生きる暮らしの中で、もう一度灯していくこと。
そのことを、この旅が教えてくれた。

あの歌に、この旅に、
ひとつの灯りのようなものを感じている。
これからも旅を続けながら、その光を追い求めていくのだろう。

新 ば し 芸 者 の お 気 に 入 り(東をどり 第100回記念)

2025.05.14Wed - 05.24Sat

橋本 有史

花柳界とは芸者文化の残る地域を指し新橋花柳界は江戸時代を起源とし現在まで続く京都祇園他と並ぶ品格と格式のある花柳界です。
芸者衆は三味線、舞踊、唄、茶道等の芸に常に精進を欠かしません。また舞踊であれば尾上、西川、花柳三流の家元の直弟子であるなど芸についてはトップクラスの実力の持ち主です。
その芸の発表の場としての東をどりは大正14年に落成した新橋演舞場のこけら落とし公演として始まり今回記念すべき第100回の公演が5月21日から27日まで新橋演舞場で開催されます。
新橋花柳界は客と店・芸者との信頼関係を大切にするため、いわゆる一見さんお断りの世界ですが東をどりを通じて新橋の文化に広く触れることが出来ます。この度東をどり第100回を記念し写真展「新橋芸者のお気に入り」を開催いたします。 新橋芸者が花柳界での仕事に、お稽古に使用する小道具の中から特にお気に入りの一つを芸者衆全員からご提供頂き一つ一つ大切に撮影いたしました。
普段はならなか触れることの出来ない新橋花柳界の文化、習慣を「モノ」という側面から感じて頂ければ幸いです。

現在新橋には38名の芸者がおりますが38名分を一度に展示することは難しいため前期後期に分けて展示いたしますのでそれぞれの展示をご覧いただければ幸いです。また東をどり初期の写真も数点展示し、その歴史を感じて頂く展示となっています。

R A I N B O W

2025.04.16Wed - 04.24Thu

大塚 滋

20代の頃、モノクロフイルムで写真を撮り、現像も自ら行なっていた。
自宅に暗室を作り、これからプリントを楽しもうという時に、現像液で手が荒れてしまった。
友人に勧められた遠くの病院に通ったり、色々な薬を試してみたが、治る感じがしなかった。
次第に写真を撮ることも辛くなってしまった。
もう写真はやめようと決めて、カメラや暗室の道具を全て手放し、撮影して現像していなかったフイルムも捨てた。

それでも写真の世界で30年生きてきた。

ある時、人生の節目となる旅に出た。 借りたデジタルカメラを鞄に入れて。
久しぶりにしっかりカメラを構えた瞬間、心が震えた。
まるで初めてカメラを手にした日のように、純粋なワクワク感がよみがえり 気が付けば夢中になってシャッターを切っていた。

この写真は、その旅の記録。

写真を通じて振り返る自分の人生には、消化できたこともあれば、まだ抱え続けているものもある。 それでも、この旅を経て、『よかったな』と素直に思えた。

思い返せば、雨の日の様な気持ちでいることが多かったのかもしれないが、 雨が上がったら、またカメラを持って旅に出たい。

第2回 写真芸術 アトリエ Photo1 写真展

2025.04.02Wed - 04.10Thu

山田 省蔵 主宰グループ展

早くも、前回の写真展から3年が過ぎました。
今回は、多くの方にご覧いただく第2回目の写真展になります。
季節感を入れた野外実習、ライティングのスタジオ実習などの経験を活かした作品展です。
定期の講座以外に今回は『 動 』((被写体の複雑な動き、カメラ自身を動かす技法など))をテーマに加えて自由な視点表現での 作品を展示しました。これからも広い視野で高いレベルの写真作品に挑戦して参ります。

Void

2025.03.19Wed - 03.27Thu

𠮷井 脩人

21歳の時、交通事故に遭った。
事故直後は本人確認が出来ないくらい顔に酷い怪我を負った。
入院先のベットの上で出来ることは何もなく、ただ天井を見つめ過ぎゆく時間の中で、頭の中に浮かぶ作品の原石たち。
退院後も人と会うことは極力避け、通院を続ける日々。
家に籠り、あの時思い浮かべた原石たちを写真にするには丁度いい時間だった。

事故に遭う前と遭った後の記憶は地続きで、しかし思考は変わったように思う。
自分は前の自分と同じであり、同じではない。
一度「虚」になった自分を形作るように写真を撮り続ける。

Memories a la carte

2025.02.19Wed - 02.27Thu

Takehiko Niwa

1970年頃から海外出張に行くことが多く、仕事の合間にいろんな所で撮影。
世界中飛びまわり撮ったフィルムの本数は数えきれないほど。今回の展示は50年以上撮りためた作品の中からピックアップしてお送りします。

【使用カメラ / レンズ】
HASSELBLAD 500CM / Linhof マスターテクノラマ612 / 617 / PENTAX67 / 645 /
CONTAX RTS / FUJICA SW-69 / SW-645 / NIKON F-90 / CANON F1 / Mamiya7 /
クラウングラフィック 4x5

ニコン / キヤノン / コンタックス / フジカ / ペンタックス / マミヤ / ハッセルブラッド / リンホフ / クラウングラフィック / ニッコール / フジノン / シュナイダー / ローデンストック

「ハーレムの熱い日 Black is beautiful ! 」吉田 ルイ子 追悼展

2025.02.05Wed - 02.13Thu

吉田 ルイ子 追悼展実行委員会

黒人差別への抗議が広がった1960年代にニューヨーク・ハーレムに暮らし、隣人たちの眼差しを撮り続けたフォトジャーナリスト吉田ルイ子。 貧困・麻薬・売春・差別に象徴される街で、ブラックパワーの逞しさにふれ、自らの差別意識と向き合いながらシャッターを切った。 女性や子ども、弱き立場の人びとの語らいに耳を澄ませ、人間としての誇りを取り戻すことに目覚めた黒い肌の輝きを、 ヴィヴィッドに捉えた珠玉の作品30点余を生前に制作されたオリジナルプリントでご紹介いたします。

著書「ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFUL」(筑摩書房)の販売のほか、一部作品の販売も予定している。